漫画「鬼滅の刃」、全23巻読みました。
あらすじ、ネタバレを含む感想を載せます。
この記事の読者の想定は下記の通りです。
漫画「鬼滅の刃」のあらすじを読みたい
漫画「鬼滅の刃」の要約を読みたい
漫画「鬼滅の刃」の感想を読みたい
上記の内1つでも当てはまる方は、是非お読み下さい。
未だ読んでいない方向け
「鬼滅の刃」のあらすじ
─少年・「竈門 炭治郎」(カマド タンジロウ)、13歳。
決して裕福ではない家で生を受けるも、幸せを実感しつつ日々を過ごしていた。
「お腹を空かせた弟達に、妹達に、母に、少しでもご飯を食べさせたい」。
そんな思いから、「その日」も足場が悪い山道を通り、村に向かい、炭を売ってお金を稼ごうとしていた。
その日…村に行っている間に、家族は鬼に襲われ、全員死に絶えたかのように思えたが、妹・禰豆子(ネズコ)のみ九死に一生を得た。
炭治郎は家族の惨状に涙ぐみながらも、歯を食いしばり、禰豆子を助ける為に、禰豆子を背負って急いで医者のもとに向かい始めるが─
「鬼滅の刃」はどのような方にお勧めか?
内容に言及します、先入観なく読みたい方はご覧になるのをお控え下さい。
下記の方にお勧めします。
- ジャンプが好き
- 社会的に評価を受けた作品を楽しみたい
- 王道的な展開を楽しみたい
既に読んだ方向け
「鬼滅の刃」の物語要約・ネタバレ
─炭治郎は禰豆子を救い、無惨を倒し、鬼のいない世界をもたらした。─
「鬼滅の刃」の物語解説・ネタバレ
─炭治郎は禰豆子を医者に連れて行こうと考えていたものの、禰豆子は鬼化し、自我を失い、炭治郎に襲いかかってきた。
通りがかった鬼殺隊の”水柱”である「冨岡 義勇」(トミオカ ギユウ)とのやり取りを経て、炭治郎に襲いかかった禰豆子は鎮静させられ、「育手」であり「水の呼吸」の使い手である「鱗滝 左近次」(ウロコダキ サコンジ)を訪ねるよう助言を受ける。
それから炭治郎は、「鬼と化した禰豆子を助ける(人間に戻す)」為に、鬼殺隊の隊士になることを目指し、”最終選別”に向け修行し続ける。
*
炭治郎は”最終選別”で生き残り、鬼殺隊の隊士になった。
鬼から人を助けつつ、禰豆子を助ける為に「元凶である鬼舞辻無惨から、人間に戻す方法を聞き出す」ことを為そうとし続ける。
初めは、鬼である禰豆子を処分しないことに反対の意を示す”柱”も多かったところ、禰豆子が人間を襲わないことの実績ができていき、認められていった。
炭治郎は、鬼殺隊として人脈を作りつつ、鬼でありながら鬼舞辻無惨の首を狙う「珠世」やそれに従う「愈史郎」と関係を作っていった。
*
多くの犠牲を伴いつつ、炭治郎らは”十二鬼月”を全て倒し、鬼舞辻無惨と対峙。
鬼舞辻無惨との戦い、炭治郎が勝利したかのように思えたが、鬼舞辻無惨の”思い”により炭治郎は鬼化。
鬼殺隊に襲いかかる炭治郎、現場に駆けつけた“鬼から人間に戻ることができた”禰豆子。
しのぶの薬や、亡くなった者達の思い、戦い続けている者達の思い、そして禰豆子の思いが炭治郎に届き、炭治郎は鬼から人間に戻ることができた。
炭治郎や禰豆子は、鬼の存在しない平穏な日常を手に入れたのだった。─
「鬼滅の刃」の率直な感想
大満足
一言でいうと、大満足。炭治郎も禰豆子もカナヲも、生きてて良かった。
「鬼滅の刃」の個人的評価
下記の観点で整理・評価する。
【ストーリー性】:物語として楽しめたか、登場人物の行動が心理的に納得しやすかったか。
【ユーモア性】:笑えたか。
【キャラクターデザイン】:キャラクターの絵が綺麗だったか、判別しやすかったか。
【描写】:キャラクターデザインを除いた絵が綺麗だったか。
10段階評価。かなり感覚的。ざっくり。
ストーリー性
(10/10)
良かった点
「有終の美」が似合う。作品を読んでいて度々「有終の美」が似合う作品だと思った。魅力的な登場人物達の最期しかり、この作品自体の最期しかり。登場人物でいえば例えば、煉獄の最期は、将来有望な後輩達や人間としてのプライドを守り通したし、猗窩座の最期は、生前守りたかった小雪のことを思い出し、再生してしまう自身の肉体を自分の素手で、幕を閉じたし(素流だけに)。最終話、炭治郎達の子孫や転生したであろう人達の話、この作品の見事な集大成だった。
気持ちが晴れやかなまま読み進められる。登場人物、善人・悪人、善鬼・悪鬼、いずれも出てきたように思うが、「悪意」を持つものはほぼ居なかったと個人的には思っていて、その点で非常に気持ちが晴れやかなまま読み進められた。個人的な解釈なので、人によって意見が分かれて当然だと思ってる。
例えば本作で「諸悪の根源」と言えるのは「鬼舞辻無惨」(キブツジ ムザン)である。「鬼の始祖」、「一番初めの鬼」であり、2体目以降の鬼の発生の原因となった鬼だが、彼自身が人を殺したり鬼化させた動機に「苦しめたい」等の悪意はない。彼自身が太陽の光を克服する為に「青い彼岸花」を探していて、それを見つけさせる為に鬼化させたり、鬼化に失敗した結果として死んだりしていた。炭治郎に説明したときも「私に殺された者達については、大災に遭ったものと思え」「普通は自然災害で死んだ際、自然災害を恨んで復讐しようなどとは考えない」主旨だったが、納得いくかは一旦置いといて、少なくとも愉快犯ではない。「無邪気過ぎる」のと「強力過ぎる力を持ち合わせてしまった」のが元凶だろうなと思う。個人的には、彼も可哀想だとは思う。やったことは(人間の尺度で考えると)到底許せないし許されるべきじゃないが、彼も被害者ではある。
物語の進展がスピーディー。物語の進展が早かったので、飽きる間もなくあっという間に読み終えられた。読み終えた今となっては読み足りないくらいに思うが、それだけ読んでる時間は短く感じた。
炭治郎の人間的魅力。あまりにも多過ぎて拾いきれないが、とても大きな魅力の3つだけ挙げると「努力できることを美徳としない」点、「思いが強い」点、「思いやりに溢れる」点かと思う。
「努力できることを美徳としない」点について。「努力できるなんて凄い」「勉強頑張ったね、凄いね」等と、「努力できることを美徳」とする価値観が一般的だと思う。私もその価値観を有してる。炭治郎の台詞で印象的なのは下記の台詞。
「頑張れ!! 頑張ることしかできないんだから 俺は昔から」
「努力は日々の積み重ねだ 少しずつでいい 前に進め!!」
…
私の「努力というものに対する価値観」(固定観念?)を変えるには十分な台詞だった。炭治郎は、努力を美徳としていない。「鬼化した禰豆子を人間に戻してやりたい」思いのみ。
炭治郎は手段に頓着してない。達成したい目的だけを見据えてる。折れそうになった心を支えたりするときの鼓舞が凄まじい。格好良すぎる。私は震えた。
思いが強い。炭治郎の「禰豆子を人間に戻してやりたい」思いから、紆余曲折を経てそれを達することができた。あまりにも多くの困難があり、あまりにも多く心は折られ、身体も傷ついたのに、諦めることはなく、一心に遂げようとした。結果として実際に遂げた。その一心も魅力だった。
思いやりに溢れる。人間に対してだけでなく、鬼への慈しむような思いも素敵だった。私は好き。「鬼だから」と一蹴して鬼の気持ちを踏んづけることはなく、「鬼とはいえ鬼になる前は人間(思いがある)」「鬼だって望んでなったわけではない」(正確には鬼にもよるが)ことを踏まえられる視野の広さ、器量の大きさも、人間的な大きな魅力だと思った。自分を傷つけ、仲間や妹を傷つけた相手に対しても同様。私ならそうはいかない、無理だと思う(復讐心に支配される)。「精神力の高さ」の面で見ても、本当に凄い。納得の人徳。里の皆も信頼してたし、無惨倒した後の病室もいっぱいになってた。本当に人間的に素敵、年齢は関係ない。私は炭治郎を尊敬する。
家族愛が素敵。一部炭治郎を筆頭に、家族愛豊かな人物が多かったように思う。竈門家然り。一例としては、無惨との戦いで生死の境を彷徨った、不死川実弥(シナズガワ サネミ)、天国側に弟・玄家(ゲンヤ)がいて、地獄側に母親の姿を見つけたとき、地獄側に行って背負って歩くって本心で言ってた。素敵過ぎる。
不満が残る点
医者は何者だったのか。鬼舞辻無惨を鬼にした医者、結局何者だったのかよく解らなかった。この掘り下げを期待していただけに、全然なかったのは残念。なぜこの医者は「鬼にする方法を知っていた」のか、「鬼という概念を知っていた」のか、知りたい。個人的には鬼舞辻無惨を倒した後に、この医者に絡んだ情報が掘り下げられる展開も想定していた。
例えば(ここからは妄想だが)、医者に入れ知恵をした何者か(神でも宇宙人でもなんでもいいが、人間とは別の何か)が現れて、鬼舞辻無惨と共闘でも決め込むのかなぁと想像していた。そして鬼舞辻無惨が戦闘中に死ぬ…と。まぁ想像通りにいったら面白くなかったので、その点は正直安堵してる。
「匂いを嗅ぎ分けられる理由」「足が速い理由」「頭が硬い」はなんだったのか。よく解らなかった。竈門炭治郎(カマド タンジロウ)は「匂い」を嗅ぎ分けられ、戦闘(※1)や日常生活(※2)に活かしたりしていた。
鱗滝左近次(ウロコダキ サコンジ)も匂いを嗅ぎ分けられるとのことだったけど、理由等について掘り下げもなかったのは残念。
匂いというのは、結局なんだったのか。善逸は耳が良く、伊之助は勘が鋭い特徴があり、そこから戦闘に活かしている部分があったから、それの匂い版と言われればそれまでなんだけれど。
「足が速い」は、個性として多少速い程度なんだと宇髄天元(ウズイ テンゲン)らと走ったときに解った。それはいい。
「頭が硬い」は、全く解らなかった。鬼との戦闘時でも活かせる屈強な頭の硬さ、猗窩座以外には勝る程だった。なんで硬かったのか?「なぜか幼い頃から硬かった」「両親もなぜかは解らなかった」「いつぐらいには気付いた」「理由はこうかもしれないが、明確ではない」だけでもいいから、言及して欲しかった。
※1 急所を見つけたりするのに活用。
※2 不死川玄弥(シナズガワ ゲンヤ)の兄:不死川実弥(シナズガワ サネミ)に対して「憎しみの匂いを感じない」と判断したりするのに活用。
禰豆子はなぜ、人間を襲わずに済んだのか。「精神力の高さ」のようなことも言ってたような気もするけど、よく解らなかった。過去に鬼化してしまった人の中にも同じような精神力の人は居たんじゃないかな…。仮に、禰豆子の精神力が他の人と比較して段違いに高いとして、なぜ禰豆子だけそうだったかの理由が解らない。太陽の克服も、無惨は無数の人を鬼化する為の地の注入をしたのに、禰豆子だけができた理由はよく解らなかった。黒死牟(コクシボウ)等との差(※禰豆子は言葉を失い、幼児化)も解らない。
鬼になってすぐに自我を失う人、失わない人。差が出る理由がよくわからなかった。一般的には、自我を失う。禰豆子は失ったが、すぐに取り戻した。ただ言葉を失った。差はなんだったのか?原因は?(´・ω・`)…?
※個人的にはもう一歩って言ってるところは許容範囲。9.5寄りの10.0(ぶっちゃけ9.5と10.0でとても悩んだ)。
ユーモア性
(9/10)
コミカルな描写は個人的には多かったように思う。笑った。
炭治郎たちの日常生活等、かなり楽しんで読めた。
例えば冒頭で印象的なのは…1巻目、禰豆子に入ってもらう籠を作るために材料を購入しようとする炭治郎、「頭が固い」(頑固で曲げない)と評価されてたが、同じ話の終わりには鬼への頭突きで「頭が硬い」(石頭)ことが表現されてる。こういう表現好き。
因みに伊之助(イノスケ)、病室に入って「URYYYYYYYY!」と言うシーンあるが、これウリ坊(猪)だけじゃなく、某DIOを意識してるよね(ジャンプ繋がりでもある)。好き。
キャラクターデザイン
(8/10)
気になる程の似たようなキャラクターデザインのものは、特に居なかった。カナエとしのぶは姉妹なので似てて悪印象はない。
オリジナリティは高かったように思う。
主人公格の模様(炭治郎:市松模様。禰豆子:麻の葉文様 等)も、世界観(大正時代)にマッチしててよかった。
デザインとして、珠世、禰豆子、カナエ、しのぶ、カナヲ等可愛らしいキャラクターや、義勇や不死川実弥(シナズガワ サネミ)のような格好いいキャラクターもいる。
とはいえ、とっても可愛い・かっこいいキャラクターデザインというほどの印象はない。
8.5寄りの8.0かなぁというところ。
描写
(8/10)
7.5寄りの8.0かなーと。
全体的に綺麗ではあったが、戦闘シーンは判りづらい部分が多々あった気がする。
その他気になる程のところもなかったのでこれくらいかなと。
総評
「鬼滅の刃」が既に世間的な高評価を受け、人づてに「良い」と耳にしたり、「キメハラ」(鬼滅の刃ハラスメント)という言葉ができてしまったり、ユーキャンの流行語大賞に「鬼滅の刃」が選ばれたりした後に読んだ。
相応に期待値は高く、評価のハードルは最初から高かったところ、読んでみると期待していた以上だった。
炭治郎の不運な境遇には読者として胸を痛めつつ、どうか生き残った禰豆子は人間に戻って欲しい、炭治郎と仲睦まじい平和な日々を取り戻してほしいと願いつつ読み進め…一筋縄ではいかず。炭治郎は情報を集めたり、修行したり、ときには命を懸けて災難に立ち向かい、打ち克ち、ときには禰豆子(太陽未克服)より一般人を助け、禰豆子の生還を心から喜んだり、数々のドラマを経てのクライマックス。人間に戻った禰豆子と、鬼になった炭治郎、”思い”の力で人間に戻った炭治郎。物語性も凄すぎたけど、温かさが凄すぎた。
因みに私は、人間では炭治郎が特に気に入っていて、鬼では猗窩座が気に入ってる(需要があって機会を作れればキャラクター紹介とかできたらと思ったりする)。女性キャラで特に好きなキャラを挙げるとしたら珠世かなぁ。執念深さ凄い(素敵です)。彼女いなかったら無惨は倒せず、炭治郎含む鬼殺隊一同は生還できてないと思う。
どこにでもいる一般的な少年が、妹を救いたい一心で数々の苦難に立ち向かい、打ち勝ち、たくましくなり、妹を救うのみでなく人間を脅かす悪を滅する…王道的なサクセスストーリーだったと思います。私は好きです。